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井手口 栄治*; Kibdi, T.*; Dowie, J. T. H.*; Hoang, T. H.*; Kumar Raju, M.*; 青井 考*; Mitchell, A. J.*; Stuchbery, A. E.*; 清水 則孝*; 宇都野 穣; et al.
Physical Review Letters, 128(25), p.252501_1 - 252501_6, 2022/06
被引用回数:2 パーセンタイル:46.35(Physics, Multidisciplinary)始状態と終状態のスピンパリティが間の遷移は、電気単極遷移と呼ばれるガンマ線放出が禁止されている特殊な電磁遷移しか起こらない。状態は偶偶核の変形バンドのバンドヘッドであることから、電気単極遷移は古くから原子核の変形を知るための重要な手がかりとされてきた。その遷移の行列要素は通常、2準位模型によって始状態と終状態間の変形度の差と両者の混合の程度という2つの量で理解される。本研究では、Caのからへ遷移する寿命をオーストラリア国立大学にて測定した。これによって得られた電気単極遷移行列要素は比較的軽い原子核で知られている値よりも著しく小さいことがわかった。その電気単極遷移行列要素が抑制されるメカニズムとして、3つの変形した状態が混合することに伴う波動関数の打ち消しという、これまで考慮されてこなかった要因が重要であることが大規模殻模型計算の結果からわかった。
Ash, J.*; 岩崎 弘典*; Mijatovi, T.*; Budner, T.*; Elder, R.*; Elman, B.*; Friedman, M.*; Gade, A.*; Grinder, M.*; Henderson, J.*; et al.
Physical Review C, 103(5), p.L051302_1 - L051302_6, 2021/05
被引用回数:3 パーセンタイル:46.8(Physics, Nuclear)カルシウム同位体は陽子魔法数20を持つため基底状態は球形であるが、変形共存と呼ばれる、数MeV上に変形した状態がある現象が予想されている。回転バンドの存在によってそれが実験的に確かめられるが、Caは安定核の融合反応で作るには中性子が多すぎるため、これまで回転バンドの存在が確かめられていなかった。この研究では、ミシガン州立大学の超伝導サイクロトロンにて中性子過剰核Kビームを作り、そこからLi(K,)Ca反応によってCaの高スピン状態を生成した。そこからの脱励起ガンマ線の観測により、までの回転バンドの存在を確立した。そのエネルギー準位は、大規模殻模型計算の予言とよく合うことがわかり、Caでも変形共存が起こることが明らかになった。
Mller-Gatermann, C.*; Dewald, A.*; Fransen, C.*; Auranen, K.*; Badran, H.*; Beckers, M.*; Blazhev, A.*; Braunroth, T.*; Cullen, D. M.*; Fruet, G.*; et al.
Physical Review C, 99(5), p.054325_1 - 054325_7, 2019/05
被引用回数:8 パーセンタイル:64.15(Physics, Nuclear)陽子過剰核Hgにおける変形共存を調べることを目的として、ユヴァスキュラ大学の加速器においてRh(Kr, )反応によってHgを生成し、その原子核の励起状態からの脱励起の寿命を測定した。実験データを理論計算と比較した結果、HgではHgに比べ、プロレート変形した状態がより高い励起状態へとシフトするとともに、変形度が増大することがわかった。
野村 昂亮; Zhang, Y.*
Physical Review C, 99(2), p.024324_1 - 024324_11, 2019/02
被引用回数:9 パーセンタイル:68.38(Physics, Nuclear)希土類の原子核では、中性子数の変化とともに変形が大きく変わる、変形の相転移現象が知られている。その様相を調べるには二中性子移行反応が考えられる。この研究では、発表者が発展させた、密度汎関数法を基礎とした相互作用するボゾン模型において、二中性子移行反応を定式化した。それをSm, Gd、およびDyに対する反応と反応に適用した結果、二中性子移行反応によって変形の相転移をとらえることが可能であることがわかった。
清水 則孝*; 阿部 喬*; 本間 道雄*; 大塚 孝治*; 富樫 智章*; 角田 佑介*; 宇都野 穣; 吉田 亨*
Physica Scripta, 92(6), p.063001_1 - 063001_19, 2017/06
被引用回数:27 パーセンタイル:81.43(Physics, Multidisciplinary)モンテカルロ殻模型の手法およびその応用について概説する。モンテカルロ殻模型は、効率的に多体基底を生成することによって、従来の直接対角化では計算不可能だった物理系に対する殻模型計算を目指した手法である。このレビュー論文では、モンテカルロ殻模型のここ10年以内の発展をまとめた。手法面では、エネルギー分散を用いた外挿による厳密解の推定法や共役勾配法の導入による効率的な基底生成など、数値計算面では、より効率的な並列化や計算機の実効性能を高める数値計算アルゴリズムなどについて概説する。最近の応用としては、非常に大きな模型空間が必要な第一原理計算および中性子過剰なニッケル領域とジルコニウム領域の計算結果を紹介する。後者の中性子過剰核領域では、変形共存に興味が集まっているが、モンテカルロ殻模型では、変形の分布を解析するT-plotと呼ぶ新しい手法を開発することによって、これらの原子核の変形を直感的に理解することが可能となった。この手法は、軽い原子核のクラスター状態を調べるのにも有用である。
Chiara, C. J.*; Weisshaar, D.*; Janssens, R. V. F.*; 角田 佑介*; 大塚 孝治*; Harker, J. L.*; Walters, W. B.*; Recchia, F.*; Albers, M.*; Alcorta, M.*; et al.
Physical Review C, 91(4), p.044309_1 - 044309_10, 2015/04
被引用回数:39 パーセンタイル:91.59(Physics, Nuclear)アルゴンヌ国立研究所にて中性子過剰核NiをZnの多核子移行反応によって生成し、線検出器GRETINAを用いて線分光を行った。その結果、, 準位を初めて観測した。これらの準位は小さな模型空間を採用した殻模型計算では再現されないため、陽子の軌道からの励起を伴った大きな変形状態であると考えられる。本論文の理論グループが2014年に発表した大規模殻模型計算によってNiの励起状態を解析した結果、これらの状態は大きなプロレート変形を持つ状態とよく対応することがわかった。この結果は、中性子過剰ニッケル同位体における変形共存がNi以外にも存在することを実証するとともに、中性子過剰核における大規模殻模型計算の予言能力を確かめるものである。
宇都野 穣; 大塚 孝治*; 水崎 高浩*; 本間 道雄*
Journal of Physics; Conference Series, 20, p.167 - 168, 2005/00
被引用回数:0 パーセンタイル:0.06(Physics, Nuclear)原子核における変形共存現象は軽い核から重い核に至るまで広範にわたって見つかっているが、その中でも20領域における変形共存と配位混合領域は安定核から中性子過剰核に移るにつれ基底状態が球形から変形へと遷移する点で独特の個性を持っている。変形共存現象はこれまではおもに平均場理論によって研究されてきたが、最近のモンテカルロ殻模型に代表される大規模殻模型計算によってこの領域の変形共存現象が殻模型によって理解可能となったので、この講演でその結果を発表する。=20核では=15から18にかけて殻に2中性子励起する変形バンドが知られているので、そのエネルギー準位を殻模型によって計算し、実験値を再現することを示す。さらに、この変形バンドについて、殻模型空間におけるハートリーフォック計算に基づいた平均場的理解を与え、角運動量射影をはじめとする相関の重要性を議論する。さらに、これまでよく行われてきた、配位混合を抑制した近似的殻模型計算との結果を比較し、モンテカルロ殻模型のような多粒子励起との混合を取り入れた計算が必要であることを示す。こうした配位混合は磁気モーメントに敏感に反映することを議論する。
宇都野 穣
no journal, ,
韓国物理学会で行われるシンポジウム「Nuclear physics at the RIB facilities」にて、不安定核構造に関する最近の発展を招待講演する。この講演では特に、中性子過剰核で見られる殻構造の大きな変化とそれが原子核の形状に与える影響について、大規模殻模型計算の結果をもとに議論する。中性子数20領域では、の殻ギャップが狭まることによって中性子が殻に励起しやすくなり、その配位が変形の自由度を与える。中性子数28領域では、テンソル力によって陽子のフェルミ面近傍の軌道が接近し、ヤーンテラー効果を増幅させることによってSi核が変形する。また、Niでは、中性子がに励起した配位が陽子の殻ギャップを狭める効果によって三重変形共存が出現する。これらの興味深い現象は、主にテンソル力に起因する殻構造の変化によって統一的に理解される。
宇都野 穣; 市川 隆敏*; 清水 則孝*; 大塚 孝治*
no journal, ,
Caは陽子, 中性子とも魔法数20を持つ二重閉殻核であり、その基底状態は閉殻構造を反映して球形であることが知られている。しかし、2000年頃から、Ca周辺核では2-5MeV程度のかなり低い励起エネルギーを持つ変形バンドが系統的に存在することが知られるようになったが、これら変形状態を系統的に良く再現できる理論計算はこれまでなかった。この講演では、大規模殻模型計算を用いてCa周辺核の変形状態を系統的に再現した計算結果を報告する。変形状態の系統的再現が可能になった重要な要素は、Caにおける大きな閉殻構造の破れである。閉殻構造が破れることによってCaは大きな相関エネルギーを持ち、その効果のために、魔法数20を特徴づける殻ギャップエネルギーは、中性子分離エネルギーの実験値から単純に見積もられる値よりも小さくなる。この小さな殻ギャップエネルギーのために、殻ギャップを超えて核子が励起した状態である変形バンドが低く出現することがわかった。
宇都野 穣; 市川 隆敏*; 清水 則孝*; 大塚 孝治*
no journal, ,
Caは二重魔法核であり、その周辺核の基底状態は球形とされているが、数MeV励起した準位から始まる大きく変形した状態が存在することが知られている。Caは最近、非軸対称した超変形状態をもつことが実験的に示唆され、興味を持たれている。本講演では、Caの変形状態の性質を探るため、大規模殻模型計算によってそのエネルギー準位や遷移行列要素を計算した結果を報告する。従来知られていた6粒子4空孔励起した超変形状態の他、変形度がやや小さい4粒子2空孔励起した変形バンドも得られた。これに対応するエネルギー準位もガンマ線分光のデータの中に存在していることがわかった。
宇都野 穣; 清水 則孝*; 井手口 栄治*; 青井 考*
no journal, ,
最近、オーストラリア国立大学にて測定された、Caの超変形状態から基底状態への極めて小さな遷移行列要素を引き起こすメカニズムについて講演する。まず、模型空間を殻および殻の低い2本の軌道をとった大規模殻模型計算を行い、実験で知られている、基底状態、通常変形状態、超変形状態のを再現することを確認した。その計算によって得られた波動関数を使って遷移行列要素を粒子空孔()からの寄与に分解したところ、超変形状態から基底状態への遷移行列要素は、異なるからの寄与が互いに打ち消し合うためにその値が小さくなることがわかった。これは従来よく採用されてきた2準位模型では生じず、3準位の波動関数の混合によって初めて生まれる効果である。